仮想通貨は自己責任!

仮想通貨を売買する際、必ず使うことになるのが仮想通貨取引所です。
最近はどの取引所もセキュリティ強化に力を入れたり、サポート体制や盗難補償を充実させたりと、黎明期に比べればずっと安心して使えるようになっています。

しかし、それでもハッキングや社内の不正流用などによって預けた資産が失われるリスクがゼロになったわけではありません。莫大なお金が集まる仮想通貨取引所は常に様々な危険に晒されています。しかしながら、仮想通貨ユーザーを守るための法律はまだまだ整備が不十分です。

どんなトラブルに見舞われても、自己責任で対処しなくてはいけないのが今の仮想通貨界の常識です。
大切な自分の資産を守るためには、仮想通貨取引所が抱えるリスクを正しく知り、適切な自衛策をとらなくてはいけません。その際におすすめなのがウォレットと呼ばれるツールです。

ここでは、自分の仮想通貨を守る際に役立つウォレットについての情報をまとめました。特に、購入した仮想通貨を取引所の口座に置きっ放しにしている人は必見です。ぜひお役立てください。

仮想通貨を取引所に置きっ放しにするのは危険!

仮想通貨ビギナーのほとんどが、購入した通貨を仮想通貨取引所の口座に置いたままにしているのではないでしょうか。

しかし、仮想取引所の口座には一般的な銀行口座とは比べものにならないほど多くのリスクがつきまとっているため、資産の保管場所としてはおすすめできません。

例えば仮想通貨取引所がハッキングに遭って資産を盗まれてしまう恐れもありますし、運営している企業そのものが倒産してしまう可能性もあります。自分の不注意でフィッシング詐欺やウィルスに引っかかってしまえば個人情報と一緒に資産が流出してしまう危険もあります。

このようなリスクに対し、現在の日本ではユーザーを完全に守る法律が整えられていません。
国内の主要な仮想通貨取引所の中には、自主的に盗難補償サービスを行っていたり、大手銀行と提携して顧客の資産を守る信託保全などの対策を導入していたりするところもありますが、現状はまだ一部分の業者に限られています。

海外の仮想通貨取引所はさらに不安要素が多く、何かあった場合に日本語で問い合わせることもできず、補償も受けられないというケースもありえます。また、小規模なマイナー仮想通貨取引所などは、ある日突然前触れもなく倒産していたということがあっても不思議ではありません。

仮想通貨の世界では、万が一のことがあっても十分な保障がされるかは不透明です。そのため自分の資産は自分で守るという意識を持つことが大切になってきます。
次章では、仮想通貨史に残る2つの大規模な流出事件を例に挙げ、仮想通貨取引所が抱えるリスクについてより詳しく解説していきます。

仮想通貨流出事件の実例

ここでは、過去に日本国内で起こった大規模な資産流出事件を例に、仮想通貨取引所がどのようなリスクを抱えているのか具体的に解説していきます。

⒈マウントゴックス事件

2014年2月、仮想通貨取引所マウントゴックス(Mt. Gox)から顧客の資産である約480億円相当のビットコインが流出するという事件が起こりました。その後まもなくマウントゴックス社は債務超過による民事再生法の適用を申請し、破産しています。

当時、マウントゴックスはビットコイン総取引量の7割を占めるという世界最大の規模を誇っていました。そのためこの事件は仮想通貨業界に大きな衝撃を与え、その後の法整備が強化されるきっかけともなりました。

ビットコインが流出した原因は、当初ハッキングによるものとされていましたが、調査が進むにつれマウントゴックスCEO、マルク・カルプレス氏による横領の疑いが出てきました。現在も調査と裁判は続いていて、いまだ真相は明らかになっていません。

しかし当時、社内の人間が顧客の財産を自由に動かすことができるというずさんな管理体制をとっていたことは事実です。こうした不備を繰り返さないよう、他の仮想通貨取引所の多くは、顧客の資産を移動させる際に複数人の署名を求めるマルチシグネチャー(マルチシグ)というセキュリティシステムを導入するようになりました。

⒉コインチェック事件

2018年1月には、仮想通貨取引所コインチェック(Coincheck)で大規模な流出事件が起こっています。盗まれたのはネム(NEM)という仮想通貨で、その被害額は約580億円にも上りました。

コインチェックは2014年に仮想通貨取引業務をスタートした比較的新しい企業ですが、豊富な取り扱い通貨と割安な手数料で人気を集め、当時は国内最大手の取引所に成長していました。

しかし、2017年4月に仮想通貨に対する法律が改正され、すべての仮想通貨取引所は金融庁による審査と登録許可を受けることが義務づけられました。その際、コインチェックは登録許可がを受けられず、仮営業の「みなし業者」として位置づけられていました。

許可が下りなかった主な理由は、顧客資産の管理体制に問題があったためと見られています。事実、ネムに関してはコールドウォレット(ネット環境から切り離した状態で通貨を保管するしくみ)もマルチシグネチャーも未対応だったことから、事件後はコインチェックのずさんな管理体制に非難が集まりました。

この2つの事件から、いかに仮想通貨取引所に自分の資産を置きっ放しにしておくことが大きなリスクになるかが分かります。

仮想通貨が盗難に遭った場合、基本的にはすべて自己責任です。自分の資産を確実に守るためには仮想通貨取引所に頼らず、自衛する必要があるのです。
そこで次章では、個人が安全に仮想通貨を保管する際におすすめな「ウォレット」について解説していきます。

仮想通貨を保管するならウォレットがおすすめ

前述のように、自分の資産を取引所に置いたままにしておくと危険です。ここでは、自衛のためにおすすめしたい仮想通貨ウォレットというツールについて解説します。

ウォレットって何?

ウォレットとは、購入した仮想通貨を安全に保管するために使う仮想の財布です。

ウォレットにはオンラインウォレット、ローカルウォレット、コールドウォレット、ハードウェアウォレットなどの種類があり、それぞれ使い方やセキュリティの強さが異なっています。また、無料で使えるものから数万円程度の費用がかかるものまでコスト面も様々です。

なお、1つのウォレットには1種類の仮想通貨しか保管することができません。そのためビットコイン用、イーサリアム用といったように自分が持っている仮想通貨の種類ごとにウォレットを使い分ける必要があります。

各種ウォレットのそれぞれのメリットとデメリットを理解し、自分の資産額や投資スタイルに合ったタイプを選ぶことが大切です。

ウォレットを使うメリット

ウォレットの利点は何といっても安全性です。取引所の口座に仮想通貨を置きっ放しにせず、ウォレットに移し替えておけば、ハッキングや取引所の経営破綻といったトラブルから自分の資産を守ることができます。特に、各取引所が設定している盗難補償の上限額を上回るような多額の仮想通貨を持っている人は、必ずウォレットを使うようにしましょう。

しかし、ウォレットを使えば100%確実に仮想通貨を守れるわけではありません。ウォレットにもパスワードの紛失や物理的な破損といった弱点があるためです。ウォレットの使用はあくまで自己責任の自衛策です。管理も自分自身でしっかり行う必要があります。

次章では、ウォレットの種類にはどのようなものがあるのか、それぞれの利用方法やメリット・デメリットをふまえて解説していきます。

ウォレットの種類

仮想通貨を安全に保管するためのツール、ウォレットには大別すると4つの種類があります。ここではその4種類の特徴やメリット、デメリットを紹介していきます。

⒈オンラインウォレット

ウェブサービスの一種で、ウェブウォレットとも呼ばれています。

オンラインウォレットサービスを提供する企業のサイトにアクセスし、パスワードやIDを設定して、秘密鍵と呼ばれるウォレットへのアクセス権を発行するだけで簡単に作成することができます。

メリット

オンラインウォレットのメリットは簡単に作成できる点にあります。面倒な設定がいらず、時間もかからないため、今すぐ仮想通貨を取引所から移し替えたいという人には適しています。

また、オンライン上で提供されているサービスのため、最初に設定したパスワードと秘密鍵があれば、PCやスマホなど様々なデバイスから自分のウォレットにアクセスできる点も便利です。万が一、使っていたデバイスが壊れた場合もウォレットには影響がありません。

デメリット 

オンラインウォレットのデメリットはセキュリティ面に不安がある点です。オンライン上で管理されているため、ハッキングに遭う可能性はゼロではありません。

また、インターネット環境がないとウォレットにアクセスすることができない点も注意が必要です。同様に運営企業のシステムにトラブルがあると一時的にサービスにログインできなくなる可能性もあります。

さらに、悪質な企業がユーザーのウォレットから仮想通貨を不正に抜き取るケースも報告されています。オンラインウォレットを利用する前は、そのサービスを提供する企業が信頼できるかどうか口コミなどで確認する必要があります。

⒉ローカルウォレット

ローカルウォレットは自分のPCやスマートフォンにソフトウェアをダウンロードし、ローカル環境で使うタイプのウォレットです(サービスによってはオンラインで使えるものもあります)。

ソフトウェアウォレット、デスクトップウォレットとも呼ばれ、特にスマホにダウンロードするタイプはモバイルウォレットと呼ばれています。
利用方法はこちらも簡単で、自分のデバイスに専用ソフトウェアをダウンロードし、パスワードや復元コードを設定して秘密鍵を発行すればウォレットが作成できます。このソフトウェアは各仮想通貨の公式サイトが提供していて、無料で手に入れることができます。

メリット

ローカルウォレットのメリットはオンラインウォレットに比べて安全性が高い点にあります。インターネットから切り離された状態で仮想通貨を保管するため、ハッキングに遭う恐れはありません。ソフトをダウンロードしたデバイスがあれば、ネットに繋がっていなくてもウォレットにアクセスすることができるのも便利です。

また、専用のソフトウェアは各仮想通貨の公式サイトが配布しているもので、無料で安心して使えるのも利点の一つです。さらに通貨によってはソフトウェアウォレットを利用するだけでマイニング報酬を得られるものもあります。

デメリット

ローカルウォレットのデメリットは、ソフトをダウンロードしたデバイスを厳重に管理しなくてはいけない点です。例えばPCが故障やウイルス感染などで正常に作動しなくなった場合、中のウォレットにアクセスすることができなくなる恐れがあります。

また、ソフトウェア自体の容量が大きく、ダウンロードから起動まで十数時間以上かかる場合もあります。そのため、ソフトウェアウォレットの利用には、PCの容量やネット環境などを事前にしっかり整える必要があります。

⒊ハードウェアウォレット

ハードウェアウォレットは、専用の端末機器に仮想通貨を保管するタイプのウォレットです。端末そのものに秘密鍵が設定されているため、接続するPCを選ばずどこでもウォレットにアクセスすることができます。

使い方はUSBメモリと同じように、用意した端末機器をPCに接続し、パスワードなど簡単な設定をするだけです。その後、PCのブラウザからウォレットを管理することができます。

メリット

ハードウェアウォレットの利点は現状最も安全性が高い点です。完全にオフラインで管理しているため、ウイルスに感染したりハッキングに遭ったりする可能性はありません。
また、ローカルウォレットと違い、デバイスを差し替えればどのPCからでもウォレットを利用することができます。

デメリット

 
ハードウェアウォレットのデメリットは平均しておよそ1〜2万円程度の購入費用がかかる点です。

また、物理的な機器にデータを保存するため、管理や保管の手間もかかります。デバイスがもし破損したり、無くしてしまったりした場合は中の仮想通貨を取り戻す手段がありません。

さらに仮想通貨によってはハードウェアウォレットに対応していないものもあります。マイナーな通貨を保管したい場合には使用できない可能性もあるので注意が必要です。

⒋ペーパーウォレット

ペーパーウォレットはその名の通り、仮想通貨を移動させるために必要な秘密鍵を紙に印刷したものです。完全にアナログで管理することになるため、ハッキングやウイルスの被害に遭う心配はありません。

作り方は、ペーパーウォレット作成サービスを行うサイトにアクセスし、まずはウェブ上にウォレットを作成します。そこに任意の金額の仮想通貨を送金し、印刷用のメニューを選択すると、ウォレットのパスワードと秘密鍵を明記した紙を印刷することができます。

メリット

ペーパーウォレットのメリットはネット上の犯罪やトラブルから完全に仮想通貨を守ることができる点です。紙面に印字された秘密鍵を第三者に見られない限り、内部の仮想通貨が盗まれることはありません。ペーパーウォレットを銀行の貸し金庫で保管すればさらに万全の体制で資産を守ることができます。特に高額の仮想通貨を保管するのに適した方法といえます。

デメリット

ペーパーウォレットのデメリットは火災や盗難、インクの劣化といった物理的なトラブルに対しては無力な点です。

また、作成にはプリンターが必要で、一度作ってしまえば残高の確認や通貨の移動といった管理作業がかなり面倒になります。そのためこのタイプのウォレットは他と比べて現在はあまり普及していません。

以上が仮想通貨ウォレットの種類とその概要です。
次章では、それぞれのメリット・デメリットや投資のスタイルをふまえ、どのウォレットが一番おすすめなのか解説していきます。

どのウォレットがおすすめ?

仮想通貨ウォレットには大きく分けてオンライン・ローカル・ハードウェア・ペーパーの4種類があることは前述しました。では、仮想通貨取引所の口座にある資産を移すとしたら、その中のどのタイプが最も適しているのでしょうか。

それには投資のスタイルと資産額が大きく関係してきます。ここでは、その2点を踏まえ、それぞれのウォレットのメリットデメリットからどのウォレットを使うのがおすすめなのかを解説します。

まず、4種類の中で一番おすすめできないのがウェブウォレットです。

ウェブウォレットはインターネット環境と秘密鍵さえあれば、どのデバイスからでも簡単に自分の資産を管理することができるため、一見するととても便利です。しかし利便性とひきかえにセキュリティ面には不安があり、場合によっては仮想通貨取引所の口座と大差ないこともあります。一時的に少額の通貨を置いておくには便利ですが、多額の資産を保管するのにはおすすめできません。

もし保有している仮想通貨が高額で、それを取引には使わず中長期的に保管しておきたい場合はハードウェアウォレットかペーパーウォレットが適しています。いずれも物理的なウォレットなので、作成後は銀行の貸金庫へ預ければ万全です。

しかし、そこまで資産額が多くはなく、頻繁に取引用として仮想通貨取引所へ移し替えたい場合は、ソフトウェアウォレットが最もおすすめです。

ソフトウェアウォレットはウェブウォレットと違い、秘密鍵を第三者に送信することがありません。そのためPCそのものを紛失・破損したり、ウイルスに感染したりしない限り安全性は保たれます。

ソフトウェアウォレットは、安全性と利便性のバランスに最も優れたウォレットです。そのため、現在は仮想通貨ユーザーにとって最も一般的な選択肢と言えるでしょう。

次章では、仮想通貨取引所の口座とウォレットを賢く使い分ける方法について解説します。

仮想通貨取引所とウォレットはどう使い分ける?

ウォレットは、自分の資産を安全に保管するために必須のツールです。しかし一度ウォレットに仮想通貨を入れてしまうと、他の場所へ移し替える際に多少の手間と時間がかかるというデメリットもあります。

仮想通貨の値動きはとても激しく、わずかなタイムラグがチャンスロスに繋がることもあります。売買の好機を逃さないためにも、仮想通貨取引所の口座には取引に必要な最低限の通貨を置いておく必要があります。その上で、今は寝かせておきたい仮想通貨のみをウォレットに保管しましょう。

また、仮想通貨取引所の口座は出入金の際の手数料が割高です。買い物や家族などへの送金に仮想通貨を使いたい場合は、ウォレットに移した通貨を使った方が手数料の節約になります。

  • トレードに必要な最低限の仮想通貨は取引所の口座に置いておく
  • 寝かせておく予定の通貨や、買い物や送金に使う予定の通貨はウォレットに保管する

このように使い分けると、自分の資産を守りながら、毎日の取引を快適に行うことができます。

次章では、仮想通貨取引所に預けていた自分の資産が盗まれた場合、具体的にどのような補償が行われるのか過去の事例から解説します。

自分の資産は自分で守る!

もし仮想通貨取引所の口座に預けていた仮想通貨がハッキングなどによって盗まれた場合、どのような補償が受けられるのでしょうか。

マウントゴックス事件の場合、破綻から3年経った2017年にマウントゴックス社は被害者全員に対して流出したビットコインを全額返金しています。
しかし事件から返金まで3年も経っていること、事件の真相がいまだ明らかになっていないことなどを考えると、これがユーザーにとって納得のいく補償であったかどうかは疑問です。

コインチェックの場合は、流出事件からまもなくして被害ユーザー全員に対して流出したネムが全額返金されています。ただし返金時点でネムの価格は下落しており、その分の価格差までは補償されていません。

マウントゴックスやコインチェックは大手の取引所であったため、被害ユーザーに対して全額返金という補償をすることができました。しかし、資本金額が少なかったり、海外に拠点を置いていたりする仮想通貨取引所の場合、こうした補償をしてくれるかどうかは不透明です。倒産した後はまったく音信不通ということも十分に考えられます。

また、仮に全額が補償されたとしても、市場の変化が激しい仮想通貨の場合、レートの変動で大きな含み損が出る可能性もあります。補償までの期間に大きなチャンスロスをする恐れもあり、精神的にもかなりのストレスです。

だからこそ、ウォレットを使って自分の資産は自分で守る必要があります。仮想通貨の保管は基本的に自己責任であることを肝に銘じ、もう一度セキュリティについて見直してみることをおすすめします。


次章では、仮想通貨取引所が抱えるリスクとウォレットについて、これだけは知っておいて欲しい重要なポイントをまとめます。

まとめ

法律の整備や企業のモラル形成がまだまだ発展途上な仮想通貨。大切な資産を思わぬトラブルで失わないために、以下の点をしっかり確認しておきましょう。

  • 仮想通貨取引所の口座に資産をそのまま置いておくのはハイリスク!
  • ハッキングや倒産で取引所に預けた資産が無くなった場合、十分な補償を受けられないことも
  • 取引に使う最低限の仮想通貨を取引所に残し、残りはウォレットに保管するべし!
  • ウォレットには4種類あり、セキュリティのレベルや使い勝手の良さに違いがある
  • 資産が高額だったり、長期間保管したい場合はハードウェアウォレットがおすすめ
  • 頻繁に移し替える場合はソフトウェアウォレットがおすすめ



仮想通貨ウォレットは自衛のための心強いツールです。ぜひ自分の投資スタイルに合わせて活用してください。