仮想通貨取引所のスプレッドは初心者泣かせの落とし穴!

スプレッドという金融用語をご存じでしょうか。株やFXをしている人にとってはお馴染みの言葉ですが、仮想通貨取引においてもスプレッドは存在し、とても重要な役割を担っています。

スプレッドは、仮想通貨販売所を利用して仮想通貨を取引する際に発生する手数料の一種です。ただし、他の手数料とは違い、その価格がどこにもはっきりと示されていません。しかも他の手数料と比較してかなり割高である点も厄介です。

そのため、初心者がスプレッドについてよく知らないまま取引をしていると、気付かないうちに手数料がかさんで損をしているという事がよく起こります。


ここでは、見えにくく分かりにくい仮想通貨のスプレッドについて、その基礎知識や注意点をまとめました。これから仮想通貨を始める方は特に、スプレッドとの賢い付き合い方を知って、利益につなげて頂ければ幸いです。

スプレッドとは

スプレッドとは、仮想通貨の「買値と売値の差額」を指す用語です。

仮想通貨取引所では、「取引所」方式と「販売所」方式という2通りの方法で仮想通貨を売買することができます。そのうち販売所を利用する際に問題になってくるのがこのスプレッドです(取引所と販売所については後の章で詳しく説明します)。

具体的な例を挙げてスプレッドのしくみを見てみましょう。


ある仮想通貨取引所の販売所で、1BTC(ビットコイン)を1200円で買うことができるとします。また、1BTCを売却すると1000円で売ることができます。
この買値(1200円)と売値(1000円)を比較すると、その間に200円の差があることが分かります。この差額がスプレッドです。

なお、1BTCを1200円で買って、直後に1000円で売却すると、ユーザーは200円分の損をすることになります。この200円はどこへ行ったかというと、仮想通貨取引所に対する実質的な手数料として徴収されています。

仮想通貨取引所内の販売所では、ほとんどすべての手数料が無料に設定されていますが、実際にはこのスプレッドが手数料として機能しているのです。販売所を利用する際は「手数料無料!」といったキャッチコピーに飛びつく前に、まずこのスプレッドについて確認しましょう。

また、スプレッドは通貨ペアごとに設定が異なる点にも注意が必要です。例えばビットコイン/日本円と、イーサリアム/日本円ではスプレッドを比較すると大きな差があることが分かります。一般的に、流通量の少ない通貨や、ボラティリティ(価格の上下幅)の広い通貨ほどスプレッドが広くなる傾向にあります。

スプレッドは、ユーザーから見れば利益を圧迫する面倒なシステムとも言えます。次章では、投資における利益とスプレッドの関係について詳しく解説していきます。

スプレッドは儲けを左右する重要なポイント

販売所のスプレッドは、ユーザーが仮想通貨取引所へ支払う実質的な手数料として機能しています。ただし「この通貨ペアの今のスプレッドは〇〇円です」といった形ではっきりと明示されていません。そのぶん見落としたり軽視したりしがちですが、スプレッドは投資の儲けを左右する重要なポイントです。

スプレッドの幅が広いと、取引で利益が出しにくく、場合によっては損失が膨らんでしまいます。

例えば、1BTCの買値が1200円、売値が1000円だった場合、買ってすぐに売ってしまうとスプレッド分の200円が損失となります。仮にその後、スプレッドが狭まって売値が1100円になったとしても、やはり売却時には100円の損が出てしまいます。

また、相場が大幅に高騰し、1BTCの買値が2000円まで上昇したのに、売値は1000円のままという状況もあり得ます。この場合スプレッドは1000円にまで広がることになります。


このように、買った仮想通貨を売却した時に生じる損失のことを「含み損」と呼びます。スプレッドが設定されている販売所の場合は、仮想通貨を買った時点ですでに損が確定していることになるのです。

では、どうすればここから利益を出すことができるのでしょうか?

上記の例の場合、1BTCの売値が1200円以上になった時を狙って売却すれば利益が出ます。つまり、売値が買った時の値段より高くなっている必要があります。相場が急騰している通貨ならそうしたチャンスも頻繁に見込めますが、そうでない場合も多いので注意が必要です。

スプレッドが広いければ広い分だけ、利益は出しにくくなります。販売所で仮想通貨を買う際は、含み損に注意して、相場の変動を注意深くチェックしましょう。


次章では、仮想通貨取引所がなぜスプレッドを設定しているのか、手数料との関係を含めて解説していきます。

仮想通貨取引所がスプレッドを設定する理由

ユーザーにとっては頭の痛いスプレッドですが、仮想通貨取引所がこうしたしくみを設けているには当然理由があります。

そもそも、仮想通貨取引所はユーザーから手数料を取ることで利益を得るビジネスモデルです。スプレッドもこの手数料の一種として仮想通貨取引所の運営を支える基盤になっています。

ただし、スプレッドには他の手数料とは根本的に異なる特徴があります。それは相場の状況に応じて幅が変動するという点です。

例えば相場が高騰したり、逆に大きく値を下げていたりすると、仮想通貨取引所はスプレッドを広く設定する傾向にあります。これは取引あたりの手数料を高くすることで注文の殺到を防ぎ、仮想通貨の価格を安定させようと働きかけているためです。

逆に、価格が安定している仮想通貨のスプレッドは比較的狭くなる傾向にあります。これは一定の取引量が見込めるため、手数料を下げても利益が確保できると判断しているためです。

このように、仮想通貨取引所は、状況に応じてスプレッドを広げたり狭めたりして利益を調整しています。

基本的に固定されている他の手数料と違い、スプレッドはその時の相場の流れをしっかり把握しないと思わぬ痛手を被ることがあるので注意しましょう。


また、スプレッドは仮想通貨取引所によっても設定が大きく異なっています。次章では、その理由としくみについて解説していきます。

スプレッドの幅は取引所によっても異なる

現在、日本に仮想通貨取引所は10社以上あり、それぞれが独自のサービスを打ち出してユーザーを獲得しようとしています。中でも各種手数料は大きなアピールポイントで、キャッシュバックキャンペーンをしていたり、アルトコインの手数料を他より安くしていたりと、取引所ごとに大きな特色があります。


実質的な手数料であるスプレッドについても同様で、取引所によってその設定はかなり違っています。

例えば、Zaifはビットコインの取引手数料マイナスキャンペーンを行っているため、取引所方式でビットコインを売買する場合はとてもお得です。一方、販売所でビットコインを売買する際のスプレッドは他の取引所と比較してもかなり広く、ユーザーにとって不利な設定になっています。これはキャッシュバックキャンペーンでユーザーを集める代わりに、販売所のスプレッドを広く設定して利益を調整する方針を取っていると考えられます。また、DMM Bitcoinも出入金やFX取引にかかる手数料がすべて無料に設定されている分、販売所のスプレッドは広くなっています。


つまり、お得なキャンペーンをやっていたり、様々な手数料を無料している取引所ほど、そこでの損失を補うために販売所のスプレッドが広くなっている可能性があります。販売所を利用する際はぜひこの点に注目してみてください。

取引所と販売所の違いは?

仮想通貨取引所では、仮想通貨を売買するにあたって「取引所」と「販売所」という2通りの方法が用意されています。

ここでは、この2つの違いとそれぞれのメリット・デメリットを解説していきます。


「取引所」方式は板取引とも呼ばれ、ユーザーが同士が「板」と呼ばれる場を介して仮想通貨を売買する形を取っています。ユーザーは板に自分が欲しい仮想通貨の価格を提示し、それが他のユーザーの希望と折り合えば取引が成立します。

一方、「販売所」方式は仮想通貨取引所を運営する業者とユーザーが直接取引するという形を取っています。ユーザーは、あらかじめ業者が仕入れた仮想通貨を買ったり、あるいは業者に対して売ったりすることができます。

取引所のメリットとデメリット

取引所の最大のメリットは手数料が安いことです。

取引所方式では、仮想通貨取引所を運営する業者はあくまで場を提供しているに過ぎません。そのため経営コストが低く、そのぶんだけ取引にかかる手数料が安く抑えられています。仮想通貨取引所によって多少の差はありますが、ビットコイン/円の場合、一回の取引につき高くても0.1%〜0.3%程度で、無料にしている取引所も多くあります。

取引所のデメリットは注文方法がやや複雑で、初心者には難しく感じられる点です。相場を読んで注文を出す必要があるため、仮想通貨に関する基本的な知識やチャートを読むスキルが求められます。

販売所のメリットとデメリット

販売所のメリットは注文が簡単できることです。

販売所では、あらかじめ業者が設定した価格を支払えば、確実に欲しい仮想通貨を購入することができます。また売却する際も今いくらで売れるのかがはっきりと明示されています。注文を出し、買い手や売り手が付くのを待つ取引所方式と違い、システムが分かりやすいので初心者には向いている取引方法を言えます。

販売所のデメリットはスプレッド(手数料)が高くつくということです。主要な販売所が設定しているスプレッドをパーセンテージで見ると、およそ2〜4%程度の平均的な割合になっています。取引所の手数料が無料〜0.3%程度であることと比較すると、かなりの高額であることが分かります。

次章では、仮想通貨取引所ごとのスプレッド幅を比較し、どこが最もお得なのか探っていきます。

主要な仮想通貨取引所のスプレッド比較

ここでは、日本国内の仮想通貨取引所の中から、販売所形式で仮想通貨を取引することができる主要な4社のスプレッドを比較しました。

対象とした通貨ペアはビットコイン/円で、数値は売買額に対するパーセンテージを表しています。


ただし、スプレッドは常に変動しています。以下の数値は固定ではなく、あくまで参考値ということをご了承ください。

  • bitFlyer 4%〜4.2%
  • Zaif 8.6%〜9.6%
  • GMOコイン 2.6%
  • DMM Bitcoin 4.1%

(2018年5月15日時点)


4社を比較すると、GMOコインが最もスプレッド幅が狭くお得であることが分かります。
反対に最もスプレッド幅が広いのはZaifでした。Zaifは取引所でビットコインを取引すると手数料がマイナスになるキャンペーンを行っています。そのため、Zaifユーザーは販売所ではなく、取引所を利用することをおすすめします。


次章では、スプレッドの狭い販売所を選ぶためのポイントについて解説していきます。

スプレッドの狭い取引所を選ぶために知っておきたいこと

取引所と比較して、スプレッドの分だけ手数料が高い販売所ですが、板取引に不慣れな初心者であったり、あるいは販売所方式でしか取引できない仮想通貨を買おうとする場合は、販売所を利用せざるをえません。

販売所を利用するなら、なるべくスプレッド幅の狭い仮想通貨取引所を選びましょう。ここでは、どうすればそうした仮想通貨取引所を見つけることができるのか解説していきます。


スプレッドは常に変動しているため、この仮想通貨取引所が一番いい!と断定することは難しいですが、その動きには一定の法則があると考えられています。

それは仮想通貨の取引量との関係です。取引量が多いとスプレッドは狭くなり、幅の変動も安定する傾向があります。取引量が多い=多くのユーザーがたくさん取引をしているということなので、一回あたりの手数料を低くしても利益が見込めるため、スプレッドが狭く設定されるのです。


つまり、仮想通貨の取引量に注目するとスプレッド幅の狭い仮想通貨取引所を見つけることができるということです。仮想通貨の取引量はユーザー数や知名度とも深く関わっています。なるべく規模の大きい仮想通貨取引所に複数登録をしておき、スプレッド幅を比較して適宜使い分ければお得に販売所を利用することができます。


次章では、販売所とそのスプレッドに関する注意点をまとめます。

スプレッドに関する注意点

仮想通貨を販売所で購入するなら、スプレッドは切っても切れない問題です。ここではスプレッドについて注意したい点をまとめます。知っておきたいのは以下の4点です。

  • 取引所の手数料に比べて、販売所のスプレッドはかなり割高です!
  • 販売所を利用する際は「含み損」について知っておきましょう
  • 相場が乱高下している時は、スプレッドの幅が広くなります
  • 仮想通貨取引所によってもスプレッドの設定は大きく異なります



販売所で仮想通貨を買う際は、取られる手数料が取引所方式に比べてかなり割高である点と、購入した時点で含み損が出る点に注意しましょう。ここをおろそかにしたまま取引を繰り返すと、利益が出ないばかりか、残高がどんどん目減りすることになりかねません。

また、スプレッドは相場に応じて変化する点と、仮想通貨取引所によって設定幅が大きく異なる点にも注意が必要です。購入ボタンを押す前に、必ずいくつかの仮想通貨取引所を比較し、スプレッドの変動を注意深く観察しましょう。


次章では、スプレッドに関する基礎知識をおさらいし、まとめて解説していきます。

まとめ

仮想通貨取引所のスプレッドに関する情報をまとめました。最後にこの記事の重要なポイントを4つ確認しておきましょう。


  • スプレッドとは、仮想通貨の買値と売値の差額です
  • スプレッドは実質的な手数料として徴収されています
  • ビットコインを買うなら販売所より取引所がオススメ
  • 販売所を利用する際は、複数を比較してお得なところを選びましょう



仮想通貨取引所内の販売所は使い方が簡単でしくみが分かりやすく、初心者にとってはありがたい場でもあります。

しかしビットコインに関して言えば、現在、ほとんどの仮想通貨取引所で取引所方式が主流になっています。ビットコインを買う際は、ぜひ取引所方式を選ぶことをオススメします。

また、ビットコイン以外の仮想通貨を買う際など、どうしても販売所を利用する場合は、少しでもスプレッドの狭い販売所とタイミングを狙い、できるだけお得な取引ができるように工夫しましょう。