Yenの一歩先を行く仮想通貨「Zen」とは

2017年11月、仮想通貨取引所Zaif(ザイフ)にZenという仮想通貨が上場しました。
このZenは本来1枚1円であるところ、上場直後に5000円という破格の高値を付けたことで大きな話題となりました。
暴騰は一瞬のことで、価格はすぐに元の1円に戻りましたが、5000倍という記録的な値上がり幅はこの仮想通貨がどれだけ多くのユーザーに注目されているかを物語るものでした。

市場から大きな注目を集めたZenとは、いったいどのような仮想通貨なのでしょうか。
Zenというネーミングは、Yen(円)の一歩先を行く仮想通貨という意味を持っています。その名の通り、将来的には日本円の代わりになることを目指して作られた非常に特殊な性質を持つ仮想通貨です。

ここでは、今後、仮想通貨全体の将来に大きな影響力を持つと考えられるZenについて、その基本情報や他の仮想通貨との違い、使い道や将来性などについて解説していきます。

Zenの基本情報

ZenはBCCC(一般社団法人ブロックチェーン推進協会)が発行する仮想通貨の一種です。
BCCCは仮想通貨の基幹技術であるブロックチェーンの健全な発展と普及のために活動する組織で、仮想通貨取引業者やIT企業、銀行などの民間企業によって運営されています。

Zenは、正確に言うと仮想通貨の中でもトークンと呼ばれるものにあたります。
トークンとは、企業が自社のプロジェクトを進めるための資金を調達したり、株式優待の代わりに株主に配ったりする目的で発行する代替通貨で、ビットコインやリップルといった一般的な仮想通貨とは役割や性質が大きく異なっています。

数あるトークンの中でも、Zenは他とは全く違うユニークな性質を持っています。次章では、Zenが他の通貨とどのように違っているのかについてより詳しく見ていきます。

Zenは他の仮想通貨と何が違う?

Zenというトークンは他の仮想通貨と根本的に異なる性質を持っています。
ここでは、Zenが他の通貨とどこが違うのかを1つずつ解説していきます。

1.Zenは社会実験のために作られた仮想通貨

Zenを発行するBCCC(一般社団法人ブロックチェーン推進協会)は、仮想通貨の健全な普及を目指す業界団体です。
現在、ビットコインをはじめとした多くの仮想通貨は価格の変動が激しく、日本円やドルといった法定通貨の代わりに買い物などの決済に利用するには向いていないという課題を抱えています。BCCCはその点を克服し、将来的に仮想通貨を決済用としてより普及させるために、常に価格が安定するしくみを採用した通貨を発行する実験を開始しました。その通貨がZenです。
Zenは、仮想通貨による決済がどれくらい便利になるのか、どのようなメリットや問題が発生するのかといった点をBCCCが検証するために発行した通貨です。成り立ちからして、他の仮想通貨とは根本的に異なっていると言えます。

2.価値が1Zen=1円と決まっている

BCCCはZenについて「従来の仮想通貨のようにインターネット上で取引を行うことができ、かつ、日本円と高い為替連動性を保持するものとして利用することができる仮想通貨となることを企図したデジタルトークンです」と説明しています。
つまりZenは、価格を安定させるため日本円との為替と連動するように作られた仮想通貨です。発行元のBCCC側が仮想通貨取引所に対して注文を調整することで、常に1Zenが1円になるように保証されています。
本来、トークンは企業が自社の利益のために発行するものです。企業側にとっては発行時よりも通貨の価値が上がらなくては意味がありませんが、Zenに限っては企業の利益ではなく仮想通貨の普及を目的としているため、例外的に価格の安定を前提にしています。

3.売却益を得ることを目的に作られていない

前述の通り、Zenは常に1Zenが1円になるよう発行元に管理されている仮想通貨です。他の仮想通貨と違って価格が変動することがないため、安く買って高く売るという投資の原則に則ることができません。つまり、Zenは買って保有しておいても価値が高騰する可能性はなく、売却によって利益を得ることができない仮想通貨なのです。

Zenは仮想通貨を普及させるために実験的に発行された、価格が変動しない特殊なトークンです。
次章では、なぜ仮想通貨普及のために価格を安定させる必要があるのか、その理由について詳しく解説します。

なぜ 1Zen=1円と決まっているの?

Zenは通常の仮想通貨と違い、ブロックチェーン技術や仮想通貨決済を普及させるための実験として、1Zenが1円になるように調整されています。
ではなぜ、1Zen=1円とすることが仮想通貨の普及に繋がるのでしょうか。

ビットコインに代表される従来の仮想通貨は価格の上下動が非常に激しいのが特徴です。そのため投機の対象としては大きな人気を集めていますが、円や商品券の代わりとして買い物などの支払いに使うには向いていないと言わざるを得ません。例えば、ある企業のトークンを1000円分買った翌日、そのトークンの価値が半値の500円まで落ち込むということも仮想通貨の世界では日常茶飯事です。

そこで、BCCCはZenという常に1単位が1円と同じ価値を持つ仮想通貨を実験的に発行しているのです。

次章では、日本円に対して常に価格が一定に保たれていることによって、Zenにはどのようなメリットがあるのか解説していきます。

Zenが普及するとどんなメリットがあるの?

BCCCは、Zenが普及することにより、仮想通貨を使った決済がより一般的になると見込んでいます。

Zen最大の特長は、ビットコインやイーサリアムといった従来の仮想通貨と違い、価格が常に安定していることです。価格が安定していれば円やドルの代わりに安心して決済に使用することができます。

仮想通貨決済には、ネット回線さえあれば誰でも素早く便利に取引ができるという利点があります。特に海外に送金する場合、従来の銀行送金に比べて格段に手数料が安く、振込も早くなります。そのため、企業がワールドワイドなビジネスを展開したり、個人が海外通販や仕送りなどをするのに非常に役立ちます。

Zenが普及すれば、今よりもさらに社会のキャッシュレス化が進み、送金や通販の決済がより素早く便利に行えるようになると考えられているのです。

次章では、今後、Zenがどのようなシーンで役立つのかを具体的に見ていきます。

Zenはどんなシーンで役に立つ?

仮想通貨による決済をより普及させるため試験的に発行されているZenですが、一般ユーザーにとって具体的にどのような場面で役立つのでしょうか。現在のところ、大きく分けて2つの役割が考えられます。

1.BCCCに加盟している企業のサービスや商品の購入に使える

BCCCに加盟している企業は約140社もあり、今後、これらの企業がZenによる決済を受け入れた場合、Zenを様々な場面で使用できるようになります。
BCCCは公式サイトでクローズドな環境におけるZenの流通を促進するために、参加企業間の決済はできるだけZenを用います。例えば、「ブロックチェーン大学校」の授業料は、Zenのみで支払うことができることとします」と発表しています。
上記のように、例えばBCCCが主催するセミナー「ブロックチェーン大学校」の受講料を始め、誰でもオンラインストアが作れるアプリ「BASE」、インターネットプロバイダ「桜インターネット」などでの支払いに使えるようになる可能性があります。

2.海外の仮想通貨取引所で日本円の代わりに使う

海外の仮想通貨取引所では日本円が使えないため、ほとんどの場合、ビットコインを入金して他の仮想通貨を購入することになります。しかしビットコインそのものも価格の変動が激しいため、相場によっては大きな損が出てしまう可能性があります。
その点、常に為替レートが安定しているZenが使用できれば、価格の変動に振り回されることなく一定の値で他の仮想通貨と取引することができるようになります。
今後、Zenを取り扱う海外取引所が増えれば、日本人ユーザーにとっては非常に大きなメリットとなります。

実験計画の途上にあるZenはまだ具体的な使い道が限られているトークンですが、今後多くの企業や仮想通貨取引所がプロジェクトに参画すれば可能性は大きく広がります。
次章では、Zenは投資に向いているのかどうか、つまり買っておけばいずれ儲けが出せるのかという点について考察します。

Zenは投資に向いてるの?

今からZenを買っておけば、この先儲けを出すことができるのでしょうか。

結論から言えば、Zenは投資に向いた仮想通貨ではありません。常に価格が一定になるように調整される通貨なので、売却益を狙うことができないためです。
また、そもそもの目的が社会実験であるため、特定企業の業績によって価値が上がるということもありません。

Zenの価値はその理念の先進性や、1Zen=1円であることの利便性にあります。そのため、投資目的でZenを買うのはおすすめできません。購入する際はその点を念頭に置く必要があると言えるでしょう。

次章では、Zenを取引できる仮想通貨取引所について解説します。

Zenを取引できる取引所

現在、Zenを取引することができる仮想通貨取引所はZaif(ザイフ)1社のみとなっています。また、日本円でのみ取引が可能で、他の仮想通貨と交換することは現在できません。
ちなみにZenはその特殊性から、一般ユーザーによるマイニングができない仕組みになっています。そのためマイニングに協力してZenを得ることはできず、手に入れるには日本円で購入するしかありません。

次章では、従来の仮想通貨とZenをうまく使い分ける方法について解説します。

Zenは通常の仮想通貨と組み合わせて使おう!

特殊な性質を持つトークンであるZenは、それ単独では売却益を出すことができません。投資の対象としては不向きですが、価格が変動しないという特徴を利用すれば他の仮想通貨の運用を有利に進めることができます。

具体的には、他の仮想通貨の避難先としてZenを使うという方法があります。
常に1Zenが1円で交換できるという特徴を生かし、自分が今現在保有しているビットコインやアルトコインの値動きが不安定な時、一時的にZenに替えておけば価格の乱高下による含み損を避けることができます。
現在、Zenは日本円としか互換性を持っていませんが、今後ビットコインや他のアルトコインと交換できるようになる可能性もあります。そうなればどのような相場にもより柔軟に対応できる待避先として使えると見込まれています。

仮想通貨投資において、Zenは投資先ではなく1種のツールとして扱うことで真価を発揮します。市場のボラティリティが大きい時には、持っている仮想通貨をZenに替えてみるのも1つの手段です。

次章では、Zenの基本情報や将来性、使い道などを分かりやすくまとめます。

まとめ

Zenとはどのような仮想通貨なのでしょうか。以下にまとめました。

  • Zenはトークン(企業が発行する代替通貨)の1つです
  • 発行元はBCCC(一般社団法人ブロックチェーン推進協会)
  • Zenは仮想通貨決済の普及を目的とした社会実験のために発行されています
  • Zenは常に1Zen=1円となるように調整されています
  • 価格が上下することがないため売却益を狙うことはできません
  • 今後、BCCC参加企業のサービスや商品を購入する際に使える見込みです
  • 海外の仮想通貨取引所で日本円の代わりに使うことも可能です
  • ビットコインなど従来の仮想通貨の待避先として活用できます

Zenは社会実験のために発行された特殊なトークンです。
現在、実験計画はまだ半ばで、今後さらに参画する企業や仮想通貨取引所が増えていくと考えられています。そうすれば、いずれはより多くのシーンで日本円の代わりにZenを決済に使うことができるようになります。
Zenは投機性こそありませんが、仮想通貨そのものの将来性を大きく左右する可能性を秘めた注目の仮想通貨と言えます。